【実践編】【第三十弾】【ミニチュアシュナウザーの性格としつけ】警戒心が強い子を「育てにくい犬」にしないために。飼い主が知っておきたい接し方(前半)

こんにちは!

静岡県浜松市にあるミニチュアシュナウザー専門の犬舎、ESTRELLA(エストレージャ)の内山です。

「うちのシュナウザー、知らない人を見るとすぐ吠えるんです」

「ほかの犬が近づくと、ものすごく警戒します」

「家では甘えん坊なのに、外に出ると別の犬みたいになります」

ミニチュアシュナウザーを飼っているお客様から、このようなご相談をいただくことがあります。

同じ犬種でも、誰にでも尻尾を振って近づく子もいれば、初めて会う人をじっと観察する子もいます。

初めての場所でも平気な子がいる一方で、慣れるまで時間が必要な子もいます。

特にミニチュアシュナウザーは、周囲の変化に敏感で、家族や自分の生活環境をよく観察する傾向がある犬種です。

そのため、飼い主さんから見ると「警戒心が強い」「神経質」「気が強い」と感じられることがあります。

しかし、ここで知っていただきたいことがあります。

警戒心が強いことと、育てにくい犬であることは同じではありません。

むしろ、その子の警戒心を理解し、適切な接し方を続けることで、安心して暮らせる場面を少しずつ増やしていくことができます。

反対に、良かれと思って行った接し方が、犬の不安を強めてしまうこともあります。

今回はミニチュアシュナウザー専門ブリーダーの視点から、警戒心が強い子の性格の読み解き方、子犬の頃から意識したい社会化、吠えたときの対応、来客や散歩での接し方について詳しくお話しします。


目次

そもそも「警戒心が強い犬」とは?

警戒心という言葉を聞くと、あまり良い印象を持たない方もいるかもしれません。

しかし、警戒心は犬にとって自然な感情や反応の一つです。

犬は初めて見るもの、聞き慣れない音、知らない人や犬などに対して、まず安全かどうかを確認しようとすることがあります。

例えば、散歩中に見慣れない大きな荷物が置いてあったとします。

何も気にせず通り過ぎる犬もいれば、少し離れた場所で立ち止まり、じっと観察する犬もいます。

後者の犬は、必ずしも怖がりというわけではありません。

知らないものに対して慎重に行動している可能性があります。

大切なのは、警戒したあとに、どのような行動を取るかです。

少し観察してから自分で近づけるのか。

飼い主さんの声を聞いて落ち着けるのか。

距離を取れば安心できるのか。

それとも、いつまでも緊張が続いてしまうのか。

こうした違いによって、必要な接し方も変わってきます。

警戒心があること自体を問題にするのではなく、その子が何に対して、どの程度警戒しているのかを理解することから始めましょう。


ミニチュアシュナウザーはなぜ警戒心が強いと言われるの?

ミニチュアシュナウザーは、もともとドイツで発展した犬種です。

農場などでネズミを捕る仕事を担い、周囲の物音や動きに注意を向けることが求められてきました。

その歴史的な背景もあり、ミニチュアシュナウザーには、活発さや注意深さ、周囲への反応の良さが犬種の特徴として語られています。

ただし、すべてのシュナウザーが警戒心の強い性格になるわけではありません。

性格には遺伝的な要素だけでなく、子犬時代の経験、生活環境、社会化、人との関わり方など、さまざまな要因が関係します。

また、同じ「警戒しているように見える行動」でも、その理由は一つではありません。

知らない人が怖い。

大きな音に驚いた。

相手に近づいてほしくない。

興奮している。

以前に嫌な経験をした。

こうした理由を区別せず、すべてを「シュナウザーは気が強いから」で片づけてしまうと、その子に合った対応ができなくなります。

犬種の特徴を理解することは大切ですが、最後に見るべきなのは、目の前にいる愛犬自身です。


警戒心が強い子に見られやすい行動

警戒心というと、吠えることを思い浮かべる方が多いと思います。

しかし、犬が警戒しているときの行動は吠えることだけではありません。

例えば、知らない人が近づいてきたとき。

すぐに吠える子もいれば、動かずに相手を見つめる子もいます。

飼い主さんの後ろに隠れる子もいますし、反対に身体を前へ出して相手との距離を取ろうとする子もいます。

ここで注意したいのが、静かにしているから安心しているとは限らないということです。

吠えていなくても、身体が固まっている場合があります。

耳を後ろへ倒す。

尻尾を下げる。

口を閉じて身体を硬くする。

顔をそむける。

唇を舐める。

あくびをする。

こうした仕草が、状況によっては不安や緊張を示していることがあります。

もちろん、一つの仕草だけで犬の気持ちを決めつけることはできません。

重要なのは、身体全体の様子と、そのとき周囲で何が起きているかを合わせて観察することです。

普段から愛犬の表情や姿勢を見ていると、「今日は少し緊張しているな」という小さな変化にも気づきやすくなります。


「怖がり」と「攻撃的」は同じではありません

警戒心が強い子が吠えたり、歯を見せたりすると、「攻撃的な性格なのでは?」と心配されることがあります。

しかし、犬の威嚇行動にはさまざまな背景があります。

例えば、知らない人が急に顔を近づけてきた場合。

犬が後ずさりしているのに、相手がさらに近づいてくる。

逃げる場所がなくなり、最後に吠えたり、うなったりすることがあります。

このような場合、犬は相手を攻撃したいというより、距離を取ってほしいと伝えている可能性があります。

ここで無理に触ろうとしたり、強く叱ったりすると、犬はさらに追い詰められてしまうかもしれません。

うなり声は、犬が不快感や不安を伝えるための重要なサインでもあります。

うなることだけを罰してしまうと、警告を出さずに噛むようになる危険性もあります。

もちろん、噛みつきを防ぐための安全管理は必要です。

ただ、行動を止めることだけに集中するのではなく、なぜその状況になったのかを考えることが大切です。


子犬の頃の「社会化」が大切な理由

警戒心が強い子を育てるうえで、特に大切なのが子犬時代の経験です。

犬には、生後早い時期に人や動物、さまざまな環境を受け入れやすい社会化期があります。

一般的には生後3週頃から12〜14週頃までが重要な時期とされていますが、個体差があり、その後も学習は続きます。

この時期に経験したことは、その後の行動や環境への適応に影響することがあります。

ただし、ここでよくある誤解があります。

社会化とは、できるだけ多くの人や犬に会わせることではありません。

本当に大切なのは、新しい経験を安全で穏やかなものにすることです。

例えば、初めて知らない人に会った子犬が、少し緊張しているとします。

そこで、「子犬のうちに慣れさせないと!」と考えて、何人もの人に次々と抱っこしてもらう。

子犬が嫌がっていても、そのまま触ってもらう。

これでは、社会化のつもりが怖い経験になってしまう可能性があります。

社会化で目指したいのは、

  • 「知らない人に会っても、必ず怖いことが起きるわけではない」
  • 「初めての場所でも、落ち着いて過ごせる」

という経験を積み重ねることです。

子犬が自分から近づこうとするなら、その行動を見守る。

距離を取りたがるなら、無理に近づけない。

安心していられる範囲から、少しずつ経験を増やしていくことが大切です。

なお、ワクチン接種が完了していない子犬では、感染症対策にも配慮する必要があります。

抱っこで外の景色や音を経験させるなど、かかりつけの獣医師と相談しながら安全な方法を選びましょう。


「たくさん経験させる」より「良い経験を積ませる」

例えば、初めて車に乗るとき。

いきなり長時間のドライブに連れていくより、まずは停車した車の中で落ち着いて過ごす練習から始める方法があります。

次にエンジンをかける。

短い距離を移動する。

少しずつ乗車時間を延ばす。

こうして段階を踏むことで、車に対する不安を小さくできる場合があります。

知らない人との接触も同じです。

最初は少し離れた場所から人を眺めるだけでも構いません。

その状態で落ち着いていられたら、褒めたり、ご褒美を与えたりします。

慣れてきたら、少し距離を縮めてみる。

ただし、子犬が嫌がるようなら無理をしない。

こうした小さな成功体験を重ねることが、安心できる範囲を広げることにつながります。

社会化は競争ではありません。

「ほかの子はもうドッグランに行っているのに」「兄弟犬は誰とでも遊べるのに」と比較する必要もありません。

一頭一頭に合ったペースがあります。


警戒心が強い子に絶対避けたい接し方

① 無理に近づける

知らない人や犬を怖がっているときに、リードを引っ張って近づけることはおすすめできません。

逃げられない状況は、不安を強める原因になることがあります。

まずは距離を取って、落ち着ける場所へ移動しましょう。

② 吠えた瞬間に怒鳴る

吠えたときに飼い主さんが大声を出すと、犬によってはさらに興奮することがあります。

また、怖い対象が現れるたびに叱られると、その対象への悪い印象が強まる可能性もあります。

③ 怖がっているのに抱っこを強制する

抱っこが安心につながる子もいますが、身体を拘束されること自体が苦手な子もいます。

嫌がる子を無理に抱き上げたり、知らない人へ手渡したりすることは避けましょう。

④ 逃げ道をなくす

犬が安心して休めるクレートやサークルは大切な場所です。

来客時などに、そこへ逃げ込んだ犬を無理に引っ張り出す必要はありません。

⑤ 何度も試す

「もう慣れたかな?」と思って、苦手な相手を何度も近づける。

こうした確認を繰り返すことで、犬の緊張が高まってしまう場合があります。

練習は短時間で終え、余裕を残すことを意識しましょう。


吠えたときは、まず何をすればいい?

例えば散歩中、向こうから大型犬が歩いてきたとします。

愛犬が相手を見つめ、身体を硬くして、吠え始めました。

このとき大切なのは、無理にその場で「おすわり」をさせたり、相手に近づけたりすることではありません。

まずは安全な距離を確保することです。

道の反対側へ移動する。

少し引き返す。

建物や車などを利用して、相手が見えにくい位置へ移動する。

犬が落ち着いて呼吸できる場所まで離れましょう。

そして、相手を見ても吠えずにいられる距離が見つかったら、そこで練習を始めます。

相手の犬に気づいた。

まだ吠えていない。

飼い主さんを見ることができた。

その瞬間に褒めたり、ご褒美を与えたりします。

これは、苦手な刺激に対する印象を少しずつ変えていく練習の一つです。

重要なのは、吠えてから叱るより、吠えずにいられる状況を作ることです。

一度興奮が強くなると、普段できることも難しくなります。

だからこそ、犬が落ち着いている段階で対応することがポイントになります。


来客時に吠えるシュナウザーへの対応

ミニチュアシュナウザーの飼い主さんから、特によく聞くのが来客時の吠えです。

インターホンが鳴る。

犬が吠える。

玄関へ走る。

お客様が入ってくると、さらに吠える。

こうした行動が毎回繰り返されると、飼い主さんも困ってしまいます。

まず考えたいのは、インターホンが犬にとって何を意味しているかです。

音が鳴る。

知らない人が入ってくる。

家の中が慌ただしくなる。

こうした出来事が結びついて、音を聞いただけで興奮するようになっている可能性があります。

そこでおすすめしたいのが、来客のない時間に行う練習です。

インターホンの音を小さく再生する。

落ち着いていられたら褒める。

少しずつ音量を上げる。

別の場所に用意したマットへ移動する練習をする。

このように、実際の来客とは切り離して練習を進めます。

来客があるときは、最初からサークルや別室で過ごしてもらう方法もあります。

その場合も、犬が安心して過ごせるよう、普段からその場所に慣れておくことが大切です。

来客のたびに必ず挨拶させる必要はありません。

知らない人が家に来ても、無理に関わらず落ち着いて過ごせる。

それも十分に良い目標です。

次回、後半へ続く→

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